>>「力学」の平原
角度を付けて物体を投げたときの運動を考えます。
水平投射をクリア後に選択可能になります。
物体をまっすぐ水平に投げるというのはかなり特殊な事例でした。 実際に物を投げると少し斜め上や斜め下に向いてしまうことも多いですし、 なるべく遠くへ投げようとして急角度で投げ上げることもあります。 今回はそのような場合の運動を考えて、どんな状況であっても物理学の理論を通して理解できるようにしておきましょう。
解くべき方程式は水平投射のときと同じです。 上方向を \( z \) 軸の正の方向にして、右向きを \( x \) 軸の正の方向だと考えます。 今回も \( y \) 軸は使いません。 物体に働く力は真下に向かう重力だけです。
\[ \begin{align*} m \ddif{z}{t} \ &=\ -m \, g \tag{1} \\[3pt] m \ddif{x}{t} \ &=\ 0 \tag{2} \end{align*} \]
これらの方程式は前に解いたことがありますので結果だけを見てみましょう。
\[ \begin{align*} z \ &=\ -\frac{1}{2} g\,t^2 \ + \ v_z\sub{0} \, t \ +\ z\sub{0} \tag{3} \\[3pt] x \ &=\ \hspace{53pt}v_x\sub{0} \, t \ +\ x\sub{0} \tag{4} \end{align*} \]
\( z\sub{0} \) と \( x\sub{0} \) はそれぞれ上下方向、水平方向の初期位置を意味していて、このままでも話の大筋に影響はないのですが、もう少し分かりやすく記号を変えたり話を単純化したりしましょう。 高さ \( h \) から投げたことにして、その地点の \( x \) 座標を 0 としておきます。
\[ \begin{align*} z \ &=\ -\frac{1}{2} g\,t^2 \ +\ v_z\sub{0} \, t \ +\ h \tag{5} \\[3pt] x \ &=\ v_x\sub{0} \, t \tag{6} \end{align*} \]
\( v_z\sub{0} \) と \( v_x\sub{0} \) は物体の初期速度の上下方向成分と水平方向成分です。 水平投射との違いと言えば、\( v_z\sub{0} \) が 0 ではないということだけです。 これらの記号については今のところはこのままにしておきます。 これらの式から時間 \( t \) を消去して軌跡の形だけを見てみましょう。 (6) 式を変形すると
\[ t = \frac{x}{v_x\sub{0}} \tag{7} \]
となるので、これを (5) 式に代入することで次の式を得ます。
\[ z \ =\ -\frac{g}{2\,v^2_x\sub{0}} \, x^2 \ +\ \frac{v_z\sub{0}}{v_x\sub{0}} \, x \ +\ h \tag{8} \]
\( x \) 以外の記号は定数ですので、これは 2 次関数の式です。 2 次関数は放物線とも呼ばれるのでした。 つまり、斜めに投げ上げたりした場合であっても物体は「放物線」を描いて飛ぶということが分かります。
この (8) 式を使って色々なことを知ることができます。 物体が到達する最高の高さはどれくらいだとか、着地するまでにどれくらい遠くまで飛ぶのか、 投げ始める高さ \( h \) を変えることで到達距離はどのように変化するのかといったことです。 「今のところそのようなことには興味がない」という方にとってはそういう話が続くのは苦痛でしょうから、あれこれ話すのはやめておきましょう。
到達距離についてだけはよく話題になることなので話しておきます。 簡単にするために \( h=0 \) の場合に限定します。 (8) 式に \( z=0 \) という条件を加えれば、物体が高さ 0 になるときの \( x \) の値を求めることができます。 2 次方程式を解くわけですが、 \( h=0 \) なのでわざわざ解の公式を使うまでもありません。 解は 2 つ出てきますが、\( x=0 \) は投げ上げた瞬間を意味していて当たり前ですから、もうひとつの値が知りたい答えです。
\[ x = \frac{2\,v_x\sub{0}\,v_z\sub{0}}{g} \tag{9} \]
上方向への初速度を上げても、水平方向の初速度を上げても、どちらでも到達距離は伸びることが分かります。 しかし人間が投げる速度には限界がありますから、 速度が同じならどの方向へ投げるのが最も効率的かということが気になってきます。
初速を \( v\sub{0} \) で、水平方向に対する角度を \( \theta \) で表したとき、 それぞれの速度成分は
\[ \begin{align*} v_x\sub{0} \ &=\ v\sub{0} \, \cos \theta \\ v_z\sub{0} \ &=\ v\sub{0} \, \sin \theta \end{align*} \]
と表せますから、これを (9) 式に代入すれば
\[ x \ =\ \frac{2\,v\sub{0}^2 \, \cos \theta \, \sin \theta}{g} \ =\ \frac{v\sub{0}^2 \, \sin (2\theta)}{g} \]
となって、45°の方向へ投げたときに最大になることがはっきりと分かります。 空気抵抗がある場合には違った結果になるのですが、今回はこれくらいにしておきましょう。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)