>>「力学」の平原
空気抵抗がある場合の落下運動を考えます。
今回は運動方程式を解くことはしません。
自由落下をクリア後に選択可能になります。
空気抵抗を無視して自由落下の計算をすると、どんな物体も質量に関係なくいつまでも加速され続けるという結果が出るのでした。 空気抵抗を計算に入れるとどうなるかについて考えてみましょう。
その前に空気抵抗について少し知っておかなければなりません。 空気抵抗には「粘性抵抗」と「慣性抵抗」の 2 つの種類があります。 前者は物体の速度が極めて遅いときに働く抵抗で、速度に比例します。 後者は物体の速度が速いときに働く抵抗で、速度の 2 乗に比例します。 それぞれ原因が異なります。 詳しくは流体力学を学ぶと良いでしょう。
どちらを使って考えればいいかを判断するために、かなり大雑把なイメージだけを話しておきましょう。 物体の後方に空気の渦ができないほどゆっくりな動きをする場合に働くのが粘性抵抗で、 霧の粒が静かに落下するような場合がそれにあたります。 一方、日常のスケールでの物体の運動の場合には必ずと言っていいくらい後方に空気の渦ができており、慣性抵抗が働きます。 (この状態になるとおそらく粘性抵抗は少し小さめになり、それ以上に慣性抵抗が大きすぎるので無視して良いほどになります。) 雨粒の落下も慣性抵抗を使って考える必要があります。
ちなみに、物体の速度を徐々に上げていくと粘性抵抗から慣性抵抗に切り替わる途中の状態が生じますが、 空気の流れが複雑なため、両方の原理が入り混じっており簡単ではありません。 この 2 種類の空気抵抗は物体の周囲の空気の流れ方の変化によって決まるものであり、 一つの式でまとめて表せるような単純なものではありません。
粘性抵抗の場合にも慣性抵抗の場合にも、物体の速度が上がるほど強くなっていきますから、 やがては重力が物体を引く力と釣り合って、物体に働く力の合計が 0 になる時が来ます。 そのような状態に達するとそれ以上の加速はしなくなり、それ以降は等速運動になります。 このときの速度を「終端速度」と呼びます。
終端速度を求めるのは難しくはありません。 空気抵抗の比例定数を \( a \) で表すと、粘性抵抗の場合には、
\[ mg - a v = 0 \]
という条件より、
\[ v = \frac{mg}{a} \]
となります。 また慣性抵抗の場合には
\[ mg - a v^2 = 0 \]
という条件より、
\[ v = \sqrt{\frac{mg}{a}} \]
となります。 いずれの場合も質量が大きいほど終端速度が大きくなります。 このように、重い物体ほど早く落ちるという経験的な常識は空気抵抗を考えに入れると説明が付きます。
終端速度に到達するまでの様子は運動方程式を立てることによって計算できますが、 少し上級レベルなのでまたいつか別の機会にチャレンジしてみましょう。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)