>>「力学」の平原
等速円運動している物体にかかる力は、進行方向に直交していることを知ります。
なお、町でまことしやかに囁かれていた「遠心力」の噂は、大部分が間違いなので騙されないように注意しましょう。
ばねと単振動をクリア後に選択可能になります。
技「弧度法」を身に付けていないと難しい箇所があります。
円形の軌道を描きながら一定速度で周り続ける物体を考えます。 これまでは物体に働く力 \( F \) を最初に決めてやってその結果としてどのような運動をするかを計算で求めてきましたが、今回は逆の考え方をします。 物体がこのような運動を続けていられるためには、どのような力が働いていたらいいでしょうか?
議論しやすくするために状況を具体的にしてみましょう。 この円形軌道は \( xy \) 平面上にあると考え、原点を中心にした半径 \( r \) の円だとします。 物体の質量は \( m \) で、速さは \( v \) で一定とします。
基本に忠実に、この動きを \( x \) 軸と \( y \) 軸の二つの方向成分に分けて考えてみることにします。 物体の位置 \( (x, y) \) は次のように表せます。
\[ \begin{align*} x \ &=\ r \, \cos \theta \tag{1} \\ y \ &=\ r \, \sin \theta \tag{2} \end{align*} \]
この \( \theta \) は物体の位置を \( x \) 軸からの角度を使って表したものです。 物体は一定の速さなので、\( \theta \) は一定の割合で増えていきます。
\[ \theta = \omega \, t \tag{3} \]
この \( \omega \) は角度が変化する速さを表しているので角速度と呼ばれます。
さて、まずは \( x \) 軸方向の動きだけに注目したいのですが、
\[ x = r \, \cos (\omega t) \tag{4} \]
という振動的な動きは「ばねに繋がれた物体」の運動を思い起こさせます。 その方程式は次のような形をしていたのでした。
\[ m \ddif{x}{t} \ =\ -k\,x \tag{5} \]
そしてその解は、今回の動きと似たものになるようにうまく初期条件を合わせて書いてやると、次のように書けるのでした。
\[ x \ =\ A \, \cos \left( \sqrt{\frac{k}{m}} t \right) \tag{6} \]
(4) 式と (6) 式を比較してやると、
\[ \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} \tag{7} \]
となっていますから、これを変形してやると
\[ k \ = m \, \omega^2 \tag{8} \]
だということになります。 つまり今回の円運動の \( x \) 軸の動きは、あたかもばね定数が \( m\omega^2 \) であるかのような力が働いていることが原因だということになります。 ということは、\( F = -kx \) に当てはめて考えると、\( x \) 軸方向に働いている力は次のように書けるでしょう。
\[ F_x \ =\ - m\,\omega^2\, r\, \cos (\omega t) \tag{9} \]
\( y \) 軸方向についてもここまでと同じ議論ができて、次のように書けます。
\[ F_y \ =\ - m\,\omega^2\, r\, \sin (\omega t) \tag{10} \]
するとこの力の大きさは
\[ \begin{align*} |\Vec{F}| \ &=\ \sqrt{F_x^2 + F_y^2} \\ &=\ m \, r\, \omega^2 \sqrt{\cos^2 (\omega t) + \sin^2 (\omega t)} \\ &=\ m \, r\, \omega^2 \tag{11} \end{align*} \]
で一定であり、しかも常に中心方向を向いていることになります。 つまり、物体の進行方向に対して常に垂直に力が働いているというわけです。 こういう状況ですから、物体の速さはいつまでも変わらず進行方向だけが変化し続けるということにも納得が行きます。 物体を円運動させる力は常に中心を向いている力なので「向心力」と呼ばれます。
次に向心力と物体の速さ \( v \) との関係を求めてみましょう。 ラジアンで表した角度 \( \theta \) というのは、円弧の長さ \( l \) との間に \( l = r \theta \) という関係が成り立つように定義されたものですから、 円弧 \( l \) の変化率である \( v \) と回転角 \( \theta \) の変化率である \( \omega \) の間にも同じ比例関係が成り立っています。
\[ v \ =\ r\,\omega \tag{12} \]
これを使って (11) 式を書き換えれば、向心力の大きさは次のように書くことも出来るということが分かります。
\[ |\Vec{F}| \ =\ \frac{m\,v^2}{r} \tag{13} \]
中心に向かう力が働いているところでは物体は必ず円運動をするというわけではないので気をつけて下さい。 物体の進行方向に対して垂直な方向に力が加わった時に、(13) 式の関係が成り立つような半径 \( r \) の円を描くように進路が曲げられると解釈するのが良いでしょう。
天体の周囲で感じる引力は中心に向かって働いていますが、 その周辺を運動する物体の速さが (13) 式の条件をぴったり満たしていない場合には天体を中心にしたきれいな円軌道を描かず、異なるカーブを描いて飛んでいってしまったり、急速に落下したりするわけです。 天体の周辺で物体がどのような動きをするかについても、そろそろ考えてみることにしましょうか。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)