>>「力学」の平原
「万有引力」をクリア後に選択可能になります。
大きさのある物体が天体に近付くと、天体の中心からの距離や方向が物体の各部分で微妙に異なっているので、物体の各部がそれぞれに違った力を受けて違った動きをしようとします。 結合のゆるい物体は、この各部にかかる力の差によって変形します。 このような、物体を変形させようとする力のことを「潮汐力」と呼びます。
この潮汐力は、物体が天体の周囲を周っていても天体に自由落下していても関係なく同じように働きます。 地球自体も、月や太陽による潮汐力によって絶えず微妙な変形を受けており、特に海水は地面との結合がゆるいために大きく移動します。 海の潮の満ち干はそのようにして引き起こされているもので、「潮汐力」という名の由来にもなっています。
天体の中心から距離 R だけ離れたところに物体があるとします。 説明を分かりやすくするために人型の物体を使って考えましょう。
天体の中心から足の部分までの距離が R で、頭の部分までの距離が R+r だとすると、足の部分のほうが強く引っ張られます。 それで、頭と足を引き離すような力が働いていると感じられるわけです。 その時の力の差を求めてみましょう。 天体の質量を M、物体の頭の部分と足の部分の質量をどちらも m だと仮定して計算してみます。
ΔF = −GMm(1R2−1(R+r)2)= −GMm(R+r)2−R2R2(R+r)2= −GMmR2+2Rr+r2−R2R2(R+r)2= −GMm2Rr+r2R2(R+r)2= −GMm2r(R+r)R2(R+r)2= −GMm2rR2(R+r)≒
計算の最後に R+r \ \kinji \ R という近似を使いました。 このような近似計算が面倒だという人は、
F = - G \frac{Mm}{R^2} \tag{2}
を R で微分してやれば
\dif{F}{R} \ =\ 2GMm\frac{1}{R^3} \tag{3}
となり、これが距離 R が少しだけ変化したときの力の変化の割合を意味していますから、これに距離 r を掛ければ同じ結果を得ることができます。 符号の違いはあまり気にする必要はありません。 気になる人はそうなる理由を考えてみて下さい。
潮汐力は左右に開いた腕の間にも働きます。 両手の質量をそれぞれ m だとして誇張して描くと次の図のような状況になります。
それぞれがわずかに違った方向に引かれるので、両手を中央から見ると、真下に引かれる力の他に横方向にも力が掛かっているかのように感じます。 それはあたかも両側から押される力のようです。 その大きさは図の長さの比で簡単に求めることができます。
\begin{align*} f \ &=\ F \frac{r}{R} \\[3pt] &=\ G \frac{M\,m}{R^2} \, \frac{r}{R} \\[3pt] &=\ G \, M\,m\, \frac{r}{R^3} \tag{4} \end{align*}
このように、縦方向の潮汐力とほとんど同じような形の式で表されます。
ブラックホールのような強力な重力を持つ天体に近付いたときには、 縦方向には強く引き伸ばされ、横方向には強く圧縮されることになるので、スパゲッティのように細長くさせられてしまいます。 これを「スパゲッティ化現象」と呼んでいます。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)