>>「力学」の平原
非慣性系への座標変換をクリア後に選択可能になります。
3 次元の極座標では 3 つのパラメータ (r,θ,ϕ) を使って位置を表します。 ある点 P(r,θ,ϕ) を始点にして、それぞれのパラメータを別個に微小変化させてやると、 それぞれ直交する方向に dr 、rdθ、rsinθdϕ だけ移動します。 この 3 辺で作られる微小な直方体の体積を次のように表すことができます。
dV = r2sinθdrdθdϕ
大きな球体はこの微小な直方体を使って埋め尽くすことが出来るので、 うまくパラメータの範囲を考えて微小体積を全て合計してやれば球全体の体積 V を求めることもできます。
V = ∫dV= ∫∫∫r2sinθdrdθdϕ= ∫R0r2dr∫π0sinθdθ∫2π0dϕ= 43πR3
天体の密度 ρ は内部まで一定ではありませんが、おそらくは球対称な質量分布になっているでしょうから ρ(r) と表せると仮定します。 微小体積 dV と密度 ρ(r) の積を作れば微小直方体の微小質量 dM が得られます。
dM = ρ(r)dV
これを積分すれば、天体の全質量 M を求めることもできます。
M = ∫dM= ∫ρ(r)dV= ∫∫∫ρ(r)r2sinθdrdθdϕ= ∫R0ρ(r)r2dr ∫π0sinθdθ ∫2π0dϕ= 4π∫R0ρ(r)r2dr
しかし密度 ρ(r) が具体的に定まっていないのでこれ以上は計算を進められません。 この (4) 式は後で使うことになります。
さて、この天体の中心から距離 s だけ離れたところに質量 m の質点を置いたときにどれだけの引力が働くかを計算してみましょう。 そのためには天体を構成する微小体積 dV が持つ質量 dM との間に働く力の大きさ dF を求めて、その全てを合計してやればいいわけです。
dF = −GmdMd2 = −Gmρ(r)dVd2
ここで使った d は微小質量 dM と質点 m との直線距離を表しています。 今からそれを具体的に求めてみましょう。 この質点 m をデカルト座標の (0,0,s) の点に置きます。 それぞれの微小質量 dM がデカルト座標 (x,y,z) の位置にあるとすると、距離は次のように表せます。
d2 = x2+y2+(z−s)2= x2+y2+z2−2sz+s2= r2−2sz+s2
デカルト座標と極座標との関係は次のようになっているのでした。
x = rsinθcosϕy = rsinθsinϕz = rcosθ
これを使えば (6) 式に含まれている z を極座標に書き換えることが出来て、距離 d は次のように全て極座標の変数で表せます
d = √r2+s2−2srcosθ
質点 m をわざわざ z 軸上に置いたのは、実はこの式に変数 ϕ が混じらないための工夫なのでした。 なるべく単純な形にしておいたほうが後の計算が楽になるからです。
さて、これで微小な力の大きさ dF を求めることが出来るようになったのですが、このまま単純に合計するわけには行きません。 それぞれの微小質量からの力はそれぞれに向きが違うので、力どうしの打ち消し合いなどを考慮する必要があります。 そのためには成分ごとに分けて計算しなければなりません。 ところが今、質点は z 軸上に置いてあり、天体の形は z 軸に対称に分布しているので、x 軸方向の力も y 軸方向の力も完全に打ち消し合って 0 になることが、わざわざ計算をしなくても分かってしまいます。 合計の力はまっすぐ z 軸の上に乗るような方向を向いているはずです。 そこで、z 軸成分だけを求めて合計してやればいいわけです。
dM と m との直線距離が d で、その距離の z 成分が s−z ですから、この比率を考えて (5) 式に掛けてやれば dF の z 成分の大きさが計算できます。
dFz = −Gmρ(r)dVd2⋅s−zd= −Gmρ(r)dVr2+s2−2srcosθ⋅s−rcosθ√r2+s2−2srcosθ= −Gmρ(r)(s−rcosθ)(r2+s2−2srcosθ)3/2dV= −Gmρ(r)(s−rcosθ)(r2+s2−2srcosθ)3/2 r2drsinθdθdϕ
あとはこれを積分してやるだけです。
Fz = −Gm∫∫∫sinθ(r2+s2−2srcosθ)3/2(s−rcosθ)ρ(r)r2drdθdϕ
とは言ったものの簡単ではありません。 ϕ についての積分は独立しているのですぐに計算できますが、r と θ が入り混じっているため、 一方の変数で積分してからその結果を残りの変数で積分してやる必要があります。 ρ(r) が具体的に定まっていないので r での積分は後回しにして、このまま θ での積分を先にやってしまいましょう。 式変形がややこしくなるので、θ での積分に関係のある部分だけを取り出して計算を進めます。 この計算は部分積分を使えばうまく行くということを知っていないと難しいと思います。
∫π0sinθ(r2+s2−2srcosθ)3/2(s−rcosθ)dθ= [−1sr1√r2+s2−2srcosθ(s−rcosθ)]π0 − ∫π0(−1sr1√r2+s2−2srcosθ)(rsinθ)dθ= −1sr[s−rcosθ√r2+s2−2srcosθ]π0 + 1s∫π0sinθ√r2+s2−2srcosθdθ= −1sr[s−rcosθ√r2+s2−2srcosθ]π0 + 1s[1sr√r2+s2−2srcosθ]π0= −1sr(s+r√r2+s2+2sr−s−r√r2+s2−2sr) + 1s2r(√r2+s2+2sr−√r2+s2−2sr)= −1sr(s+r√(r+s)2−s−r√(r−s)2) + 1s2r(√(r+s)2−√(r−s)2)
この根号を外すときに少し注意が必要です。 根号の中が 2 乗になっているので正の値であることは保証されています。 根号を外したときにも正の値になるようにしておかなくてはなりません。 今、質点 m を置いた地点は天体の外側にあるので、s>r という条件があります。 よって、√(r−s)2 と書かれている部分は (r−s) ではなく (s−r) のように書き直してやれば良いでしょう。
= −1sr(s+rs+r−s−rs−r) + 1s2r((s+r)−(s−r))= −1sr(1−1) + 1s2r(2r)= 2s2
この結果を (10) 式に戻してやりましょう。
Fz = −Gm2s2∫R0ρ(r)r2dr∫2π0dϕ= −Gm4πs2∫R0ρ(r)r2dr
ここで (4) 式を当てはめてやると、積分は天体の全質量 M で置き換えることができます。
Fz = −GMms2
こうして、天体の質量分布が球対称であるような場合には、 質量 m から距離 s だけ離れた地点に全質量が集中しているのと同じであると近似してよいということが証明できました。
ついでですから、質点 m が天体の内部にある場合についても考えてみましょう。 この場合、天体の微小質量 dM の位置によっては、r>s が成り立つ場合も出てきます。 原点を中心にした半径 s の球の外側に位置する微小質量 dM はどれもこの条件を満たします。 この場合には (11) 式の根号を外す時に正の値になるようにするために √(r−s)2 を (r−s) のように置き換えねばなりません。
= −1sr(s+rs+r−s−rr−s) + 1s2r((s+r)−(r−s))= −1sr(1−(−1)) + 1s2r(2s)= −2sr + 2sr= 0
きれいに 0 になってしまいました。 (10) 式に戻って計算する時に、r>s の条件を満たす部分だけは (15) 式の結果を使って、 r<s の条件を満たす部分については (12) 式の結果を使うことになりますから、天体内部に置かれた質点 m は、 それより深いところに位置する球体領域からのみ引力を受けるのだと言えます。
これは質点 m が置かれた位置より外側の球殻からの引力は全てきれいに打ち消し合うことを意味しています。 もし天体の内部が中心部からきれいに球形にくり抜かれていれば、その巨大な空洞の内部ではどこであっても一切、天体からの引力を感じることがないわけです。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)