#author("2019-07-01T02:04:42+00:00","default:EMAN","EMAN") #author("2019-08-15T04:26:41+00:00","default:EMAN","EMAN") #mathjax >>[[「力学」の平原]] *惑星の運動 #br **クエスト概要 万有引力というシンプルな法則に従って運動する物体の軌道が二次曲線(円・楕円・放物線・双曲線)になることを学びます。~ 様々な方法でクリアできるクエストですが、どの方法も知っておいて損はありません。 #br ルートは主に2つあります。 「デカルト座標」ルートは、クエスト発生条件さえ満たせば取り掛かれますが、解くために幾つかの技巧が要求されるほか、応用が効きにくいという欠点があります。 一方、「極座標」ルートは、クエスト発生条件に加えて名前の通りスキル「極座標」を修得している必要がありますが、その分道を見渡しやすく、比較的直感的にクエストをクリアできます。 また、(クリアに必須ではありませんが)クエスト「換算質量」をクリアすると、「恒星と惑星」というように質量が大きく異なる場合のみならず、どんな質量比の場合でも扱えるようになります。 #br **クエスト発生条件 [[ばねと単振動]]をクリア後に選択可能になります。~ 「[[ケプラーの法則]]」と「[[ばねと単振動]]」をクリア後に選択可能になります。~ クリアするためにはスキル「合成関数の微分」が必要です。~ スキル「二次曲線」を先に習得しているとよりスムーズにストーリー展開を楽しめます。 #br **攻略法 \( xy \) 平面の原点に太陽が固定されていると考えた場合に惑星がどのような軌道を持つかを考えてみます。 太陽の質量を \( M \)、惑星の質量を \( m \) とすると、 原点からの距離が \( r \) のときに惑星に働く力の大きさは次のように表されます。 \[ |f(r)| \ =\ G \frac{M \, m}{r^2} \tag{1} \] これを \( x \) 方向に働く力と \( y \) 方向に働く力とに分けて表そうとすると、次のようになります。 \[ \begin{align*} f_x \ &=\ - |f(r)| \, \cos \theta \tag{2} \\ f_y \ &=\ - |f(r)| \, \sin \theta \tag{3} \end{align*} \] \( \theta \) というのは惑星の位置を極座標で表したときの方向を意味しています。 #ref(惑星の運動/planet_orbit.png,center) これらを使えば解くべき方程式は次のようになることが分かります。 \[ \begin{align*} m \, \ddif{x}{t} \ &=\ - |f(r)| \, \cos \theta \tag{4}\\ m \, \ddif{y}{t} \ &=\ - |f(r)| \, \sin \theta \tag{5} \end{align*} \] デカルト座標の \( (x,y) \) と 極座標の \( (r,\theta) \) が一つの式の中に混在してしまっています。 どちらかに統一しないといけませんが、デカルト座標に合わせると根号が混じることになって大変なので、今回は極座標に合わせることにします。 (4) 式と (5) 式の左辺にある \( x \) や \( y \) に \[ \begin{align*} x \ &=\ r \, \cos \theta \tag{6}\\ y \ &=\ r \, \sin \theta \tag{7} \end{align*} \] を代入すれば良いだけです。 \( r \) も \( \theta \) も時間 \( t \) の関数だと考えて微分してやることになります。 いきなり結果を出すことは無理なので、根気よく 1 階微分から計算していきましょう。 微分の記号ばかりが増えて見苦しくなることが予想されるので、\( r \) や \( \theta \) の時間微分を \( \dot{r} \) や \( \dot{\theta} \) のように 上にドットを付けて表すことにします。 \[ \begin{align*} \dif{x}{t} \ &=\ \dif{(r\,\cos\theta)}{t} \ =\ \dot{r}\,\cos\theta \ -\ r\,\sin\theta \cdot \dot{\theta} \tag{8} \\ \dif{y}{t} \ &=\ \dif{(r\,\sin\theta)}{t} \ =\ \dot{r}\,\sin\theta \ +\ r\,\cos\theta \cdot \dot{\theta} \tag{9} \end{align*} \] これらをもう一度微分します。 \[ \begin{align*} \ddif{x}{t} \ &=\ \ddot{r}\,\cos\theta \ -\ \dot{r}\,\sin\theta \cdot \dot{\theta} \\ &\ \ \ \ \ -\ ( \dot{r} \,\sin\theta \cdot \dot{\theta} \ +\ r\,\cos\theta \cdot \dot{\theta}^2 \ +\ r\,\sin\theta \cdot \ddot{\theta} ) \\[7pt] &=\ \ddot{r}\,\cos\theta \ -\ 2 \, \dot{r}\,\dot{\theta}\,\sin\theta \ -\ r\,\dot{\theta}^2 \cos\theta \ -\ r\,\ddot{\theta}\,\sin\theta \tag{10} \\[10pt] \ddif{y}{t} \ &=\ \ddot{r}\,\sin\theta \ +\ \dot{r}\,\cos\theta \cdot \dot{\theta} \\ &\ \ \ \ \ +\ \dot{r}\,\cos\theta \cdot \dot{\theta} \ -\ r\,\sin\theta \cdot \dot{\theta}^2 \ +\ r\,\cos\theta \cdot \ddot{\theta} \\[7pt] &=\ \ddot{r}\,\sin\theta \ +\ 2\,\dot{r}\,\dot{\theta}\,\cos\theta \ -\ r\,\dot{\theta}^2 \sin\theta \ +\ r\,\ddot{\theta}\,\cos\theta \tag{11} \end{align*} \] これらを (4) (5) 式に代入してやると、結局解くべき方程式は次のように極座標だけで表されます。 \[ \begin{align*} m\,(\ddot{r}\,\cos\theta \ -\ 2\,\dot{r}\,\dot{\theta}\,\sin\theta \ -\ r\,\dot{\theta}^2 \cos\theta \ -\ r\,\ddot{\theta}\,\sin\theta) \ &=\ - |f(r)| \, \cos \theta \tag{12} \\ m\,(\ddot{r}\,\sin\theta \ +\ 2\,\dot{r}\,\dot{\theta}\,\cos\theta \ -\ r\,\dot{\theta}^2 \sin\theta \ +\ r\,\ddot{\theta}\,\cos\theta) \ &=\ - |f(r)| \, \sin \theta \tag{13} \end{align*} \] しかしこれでは複雑すぎます。 もっと簡単にならないでしょうか。 (12) 式に \( \cos\theta \) を掛けて、(13) 式に \( \sin\theta \) を掛けて足してやれば右辺の三角関数は消えますし、左辺の他の項も打ち消し合ったりしそうです。 また、(12) 式に \( \sin\theta \) を掛けて、(13) 式に \( \cos\theta \) を掛けて一方から他方を引いてやれば右辺は丸ごと消えますし、左辺の他の項も打ち消し合ったりしそうです。 やってみましょう。 \[ \begin{align*} m\,(\ddot{r} \ -\ r\,\dot{\theta}^2 ) \ &=\ - |f(r)| \tag{14} \\ m\,(2\,\dot{r}\,\dot{\theta} \ +\ r\,\ddot{\theta}) \ &=\ 0 \tag{15} \end{align*} \] 信じられないほどすっきりしました。 大成功です。 なんとかして解いていきましょう。 (15) 式の \( m \) は外してしまっても構いません。 そして両辺に \( r \) を掛けてやると \[ 2\,r\,\dot{r}\,\dot{\theta} + r^2 \ddot{\theta} \ =\ 0 \tag{16} \] となり、さらに次のように書き換えることが可能になります。 \[ \dif{}{t}(r^2 \dot{\theta}) \ =\ 0 \tag{17} \] 時間微分したものが 0 になるということは、このカッコ内は時間によって変化しない定数だということを意味しています。 その定数を \( h \) と書くことにして、次のように表しましょう。 \[ r^2 \dot{\theta} \ =\ h \tag{18} \] これを変形して \[ \dot{\theta} \ =\ \frac{h}{r^2} \tag{19} \] としたものを (14) 式に代入すれば \( r \) だけの方程式を作ることができます。 (1) 式の \( |f(r)| \) も代入すれば \( m \) も消えて次のようになります。 \[ \ddot{r} \ -\ \frac{h^2}{r^3} \ =\ - \frac{GM}{r^2} \tag{20} \] これを無理やりにでも解くことができれば、その解 \( r(t) \) を (18) 式に代入して解くことで \( \theta(t) \) を得ることもできますから、 両者を組み合わせて \( t \) を消去すれば軌道の形の方程式が得られるはずです。 しかしその方法は言うほど簡単ではなく、代わりに次のような技巧を使って解くのが普通です。 それは \( r \) を時間の関数 \( r(t) \) として得るのではなく、いきなり \( \theta \) の関数 \( r(\theta) \) として得てしまおうというものです。 例えば、\( r \) を \( t \) で 1 階微分したものは次のようにすれば \( r(\theta) \) という関数であるかのように書き換えられます。 \[ \dif{r}{t} \ =\ \dif{r}{\theta}\,\dif{\theta}{t} \ =\ \dif{r}{\theta} \dot{\theta} \ =\ \frac{h}{r^2} \dif{r}{\theta} \tag{21} \] さらにここで、\( r(\theta) \) の逆数であるような関数 \( u(\theta) \) を新たに導入します。 \[ u( \theta ) \ \equiv \ \frac{1}{r(\theta)} \tag{22} \] これを使って (21) 式の \( r \) を書き換えて計算を続けると次のようになります。 \[ \begin{align*} \dif{r}{t} \ &=\ \frac{h}{r^2} \dif{r}{\theta} \ =\ \frac{h}{r^2} \dif{(1/u)}{\theta} \ =\ \frac{h}{r^2} \left( -\frac{1}{u^2} \right) \dif{u}{\theta} \\ &=\ -h \dif{u}{\theta} \tag{23} \end{align*} \] この結果をさらに時間で微分したいのですが、\( \diff u/\diff \theta \) は \( \theta \) の関数だと考えてやれば理解できます。 つまり、まず全体を \( \theta \) で微分してやって、さらに \( \theta \) を時間微分したものを掛けてやれば時間で微分したことになります。 \[ \begin{align*} \ddif{r}{t} \ &=\ \dif{}{t} \left(-h \dif{u}{\theta} \right) \ =\ -h \ddif{u}{\theta} \dif{\theta}{t} \ =\ -h \, \ddif{u}{\theta} \, \dot{\theta} \\ &=\ -\frac{h^2}{r^2} \ddif{u}{\theta} \ =\ -h^2\, u^2 \, \ddif{u}{\theta} \tag{24} \end{align*} \] これを (20) 式に代入して、\( r \) を \( 1/u \) に置き換えてやると次のようなシンプルな見た目の方程式に化けます。 \[ \ddif{u}{\theta} \ +\ u \ =\ \frac{GM}{h^2} \tag{25} \] この方程式は非同次線形微分方程式と呼ばれるもので、詳しくは数学書で学ぶことをお勧めします。 解き方としてはまず \( u \) を含まない項(非同次項)である右辺を 0 と置いた場合の解を求めます。 それは「[[ばねと単振動]]」のところで出てきた式と同じ形をしているので、次のような形の解となることが分かります。 \[ u = A \cos (\theta + \delta) \tag{26} \] 残念ながらこれはまだ (25) 式の解にはなっていません。 次に、どんな形でもいいので (25) 式を満たす解を一つ探してきます。 例えば次のようなものが一番簡単でしょう。 \[ u = \frac{GM}{h^2} \tag{27} \] これは定数ですがちゃんと解になっています。 そして、この (26) 式と (27) 式を足し合わせたものが (25) 式の一般解となります。 \[ u \ =\ A \cos (\theta + \delta) \ +\ \frac{GM}{h^2} \tag{28} \] 結局、軌道の形は極座標で次のように表されます。 \[ r \ =\ \frac{1}{A \cos (\theta + \delta) \ +\ \frac{GM}{h^2}} \tag{29} \] この式の右辺の分子、分母を \( GM/h^2 \) で割ってやると、 \[ r \ =\ \frac{l}{1+\varepsilon\,\cos(\theta+\delta)} \tag{30} \] という形になりますが、これは「&color(red){二次曲線};」あるいは「&color(red){円錐曲線};」と呼ばれるものの式です。 円錐を斜めに切ったときの断面の形を表しているからです。 切るときの角度によって、円、楕円、放物線、双曲線が現れますが、(30) 式はこれらを全て表しています。 \( \varepsilon \) は楕円の場合の離心率を表しており、その値によって曲線の特徴が次のように変わります。 | \( \varepsilon=0 \) |円| | \( \varepsilon<1 \) |楕円| | \( \varepsilon=1 \) |放物線| | \( 1<\varepsilon \) |双曲線| 惑星は太陽の周りで楕円軌道を描いていますが、その軌道は今回得た解の一部だということが分かります。 今回の結果には惑星の質量 \( m \) は残っていません。 惑星に限らず、太陽の周辺に近付く物体は条件次第でこれらのいずれの軌道をも取り得るということを意味しています。 太陽系に勢い良く入ってきた天体は太陽の位置を焦点とする双曲線を描き、再び勢いよく出ていって二度と戻ってきません。 放物線というのは地表付近で物を投げたときの話にも出てきましたが、今回の話とは全く別です。 太陽の引力に捉えられ楕円軌道を描くようになるか、それとも二度と帰ってこないか、 そのぎりぎり境い目の条件のときにだけ、太陽の位置を焦点とする放物線を描いて飛び去ることになります。 どの条件の時にどのような軌道を取るかについてはエネルギーについて学ぶ必要があります。 #br **参考資料 (要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など) #br **コメント #comment