#author("2019-08-02T08:55:12+00:00","default:EMAN","EMAN") #author("2019-08-02T09:02:29+00:00","default:EMAN","EMAN") #mathjax >>[[「力学」の平原]] *ガリレイ変換 #br **クエスト概要 慣性運動している者どうしは「静止しているのはどちらなのか、本当に動いているのはどちらであるのか」を物理法則から判断することができません。 今回はそれをニュートン力学の範囲に限って考えてみましょう。 今回の話は相対性理論で「ローレンツ変換」とよく比較されるので後々重要になってきます。 #br **クエスト発生条件 [[運動の3法則]]をクリア後に選択可能になります。 #br **攻略法 一定速度 \( v \) で正の方向に進む列車を考えます。 この列車の中にいる人は自分の立場で座標を考えることができます。 たとえば中央車両の連結器の位置を原点 \( (x'=0) \) としてみます。 列車内にいる人は正の方向にも負の方向にも普段どおりに自由に行き来できます。 一方、列車に乗っておらず外から見ている人は、駅のプラットホームの中央地点を原点 \( (x=0) \) とした座標を使うとします。 この \( x \) 座標と \( x' \) 座標の関係を式にしてみましょう。 それはつまり、ある地点の座標値を \( x \) に代入すると、その同一地点が列車内からはどういう座標値 \( x' \) で表されるのかを返してくれるような式のことです。 式をなるべく簡単にするために、両者の原点がすれ違った瞬間の時刻を \( t=0 \) と定めます。 それから \( t \) 秒後には列車側の原点 \( x'=0 \) は \( x = vt \) の地点にありますから、\( x \) に \( vt \) を代入した時に \( x'=0 \) を返すような式が欲しいわけです。 それは次のように表せます。 \[ x' \ =\ x - vt \tag{1} \] 両者の座標は \( t \) 秒後には距離 \( vt \) だけ平行移動しているので、この式で問題ないことが分かります。 他の座標を代入しても正しく答えを返してくれるでしょう。 両者の座標の関係は時々刻々と変化するものだということがこの式からもはっきりと分かります。 さて、次の段階へ進みましょう。 列車の外ではニュートン力学が成り立っていることが十分に確かめられているものとします。 つまり列車の外の物体は次のような運動方程式に従って運動しています。 \[ F \ =\ m \ddif{x}{t} \tag{2} \] この運動を列車の中から窓越しに観察した場合、どのような法則に従って運動しているように見えるでしょうか。 (2) 式の中に含まれる \( x \) を (1) 式を使って書き直し、\( x' \) を使った式へと「翻訳」してやればいいわけです。 (1) 式のままでは考えにくいので、次のように変形してから代入しましょう。 \[ x \ =\ x' + vt \tag{3} \] これを (2) 式に代入することで次のように変形できます。 これを (2) 式の右辺に代入することで次のように変形できます。 \[ F \ =\ m \ddif{(x'+vt)}{t} \ =\ m \dif{}{t} \left( \dif{x'}{t} + v \right) \ =\ m \ddif{x'}{t} \tag{4} \] \[ \begin{align*} F \ &=\ m \ddif{(x'+vt)}{t} \\[3pt] &=\ m \dif{}{t} \dif{}{t} ( x' + vt ) \\[3pt] &=\ m \dif{}{t} \left( \dif{x'}{t} + v \right) \\[3pt] &=\ m \ddif{x'}{t} \tag{4} \end{align*} \] この結果は (2) 式とまったく変わりがありません。 列車の中から物体の運動を見てみても運動方程式に逆らう様子もなく、何ら違和感が無いというわけです。 この結果は (2) 式の形とまったく違いがありません。 列車の中から物体の運動を見てみてもニュートンの運動方程式に逆らう様子もなく、何ら違和感が無いというわけです。 同じことは立場を逆にしても成り立ちます。 列車内の物体の運動は列車の外から見ても、全く普通の運動方程式に従っています。 列車内の物体の運動は列車の外から見ても全く普段どおりの運動方程式に従っています。 このように、私たちは慣性運動している限りは自身が静止しているかどうかを物体の運動の様子を見て判断することが出来ません。 私たちは地球表面に住んでいて大地を基準に物事を考える癖がついているので、 大地に対して静止している状態こそが止まっていると判断しがちです。 しかし地球自体も宇宙の中で運動していますから私たちも本当は止まってはいません。 地球は公転も自転もしているので本当は慣性系ですらありませんが、それについてはあとで考えましょう。 とにかく、この世界には絶対的な静止系が存在していません。 私たちに言えるのは「何に対して静止しているのか」ということくらいです。 (1) 式や (3) 式によってそれぞれの慣性系の座標を書き換えることを「&color(red){ガリレイ変換};」と呼びます。 ガリレオ・ガリレイ自身がこのような変換式を考案したわけではありませんし、ガリレオはニュートンが生まれる直前に亡くなっているので、もちろん運動方程式についても議論していません。 彼はニュートン以前に物体の慣性について述べていた一人なので、そこに敬意を払って名付けられたものと思われます。 #br **参考資料 (要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など) #br **コメント #comment