>>「力学」の平原
一定の重力のもとでの物体の運動を求めます。
空気抵抗は無視します。
力学ぶらり旅(その3)をクリア後に選択可能になります。
地表付近での自由落下運動の様子を計算で求めます。 ニュートンの運動方程式の使い方を体験してみましょう。
なぜ地表付近に話を限定しているかというと、地球から遥か遠く離れると引力の大きさが弱くなるからです。 地表付近に限定して考えるなら、多少高いところから物体を落としても落下中に引力はほとんど変化しないと考えられるので、重力の大きさは一定だと仮定して計算したとしてもかなり正しい結果が導かれてきます。
富士山のてっぺんくらいの高さなら重力は 0.1 % くらいしか違いません。 100 km くらい上空まで行くと 3 % ほど弱くなります。 国際宇宙ステーションの軌道高度は約 400 km ですが、地表からそれくらい離れると 10 % 以上変わってしまいます。
では始めましょう。 ニュートンの運動方程式は次のような形をしているのでした。
\[ F = m \ddif{x}{t} \tag{1} \]
今回は物体の上下方向の運動だけを考えるので、上方向を正の向きとして、物体の位置を \( x \) で表します。 質量 \( m \) の物体に働く重力の大きさは、重力加速度を \( g \) で表すと
\[ F = -mg \tag{2} \]
となります。 マイナスが付いているのは重力の方向が下向きだからです。 力 \( F \) は一般的には時間や位置の関数ですが、今回は一定値なのでとても単純な問題です。 この (2) 式を (1) 式に代入したものが今回解くべき方程式です。
\[ -mg = m \ddif{x}{t} \tag{3} \]
両辺に \( m \) が入っているので、両辺を \( m \) で割って簡単にしてしまいましょう。
\[ \ddif{x}{t} \ =\ -g \tag{4} \]
このように、質量が一切関係してこない形の方程式になります。 質量の大きさに関係なく同じ動きをするだろうということを意味しています。 空気抵抗がなければどんな物体も同じ落ち方をするわけです。
(4) 式の両辺を時間 \( t \) で積分してみましょう。 積分定数を付けるのを忘れないように注意しましょう。
\[ \dif{x}{t} \ =\ -g\,t + C \tag{5} \]
この (5) 式を微分すれば (4) 式に戻るので、これで合っていることが分かります。 さらに (5) 式を微分しましょう。 もうひとつ別の積分定数が出てきます。
\[ x \ =\ -\frac{1}{2} g\,t^2 + C\,t + D \tag{6} \]
これで方程式は解けましたので、結果の解釈に移りましょう。 この現象の意味を考えていきます。
(5) 式の左辺は物体の速度 \( v \) を表していますから、次のように書けます。
\[ v \ =\ -g\,t + C \tag{7} \]
物体の初めの速度を \( v\sub{0} \) という記号で表すことにしましょう。 \( t=0 \) のときに \( v=v\sub{0} \) だということなので、 この条件を (7) 式に代入すると \( C=v\sub{0} \) でなければならないことが分かります。 また、物体の初めの位置を \( x\sub{0} \) という記号で表すことにしましょう。 \( t=0 \) のときに \( x=x\sub{0} \) だということなので、 この条件を (6) 式に代入すると \( D=x\sub{0} \) でなければならないことが分かります。
\[ \begin{align*} v \ &=\ -g\,t + v\sub{0} \tag{8}\\ x \ &=\ -\frac{1}{2} g\,t^2 + v\sub{0}\,t + x\sub{0} \tag{9} \end{align*} \]
物体の速度 \( v \) は 1 秒ごとに \( g \) ずつ減少していきます。 つまり、下方向に加速していきます。 \( g \) が「重力加速度」と呼ばれるのはこのためです。 初めに上向きに投げ上げたとしても、いつしか下向きに変わるでしょう。
物体の位置 \( x \) はもし初期速度 \( v\sub{0} \) が 0 だったなら \( t^2 \) に比例してどんどんマイナス方向へと進むと言えます。 上向きに投げ上げれば \( v\sub{0} >0 \) ですからしばらくは上向きに進みますが、 やがては \( t^2 \) に比例する項の方に負けて初期位置よりも下方へと落ちていきます。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)