>>「力学」の平原
エネルギー保存則を導くをクリア後に選択可能になります。
位置エネルギーというのは、どこでもいいからどこか一点を基準点 xs に選んで、次のように定義できるのでした。
V(x) = −∫xxsF(x)dx
この式の両辺を微分してやれば次のような関係を導くこともできます。
F(x) = −dVdx
これは、位置エネルギー V(x) の具体的な形を先に知っていれば、各点で物体に働く力 F(x) を算出することもできるということを意味しています。
さて、今からこのような関係を 3 次元空間へと拡張することを考えてみましょう。 もし (2) 式の形のままだと、物体が 3 次元空間のどこへ行っても、その位置の x 座標だけで力が決まってしまいます。 それはあまりにも特殊な状況なので、不自由すぎて使い物になりません。 位置エネルギーの形にもっと自由度を持たせて、V(x,y,z) という関数で表される形になっていてくれれば場所ごとに違った力を表現できそうです。
Fx(x,y,z) = −∂V∂x
V(x,y,z) が多変数関数になっているので偏微分記号 ∂ を使って表していますが、これは x 以外の変数を定数だとみなして普通に微分するという記号です。
ところがこのようにしただけでは少しもうまく行きません。 今のところ、この V(x,y,z) というのは力の x 成分である Fx との関係を表すための関数を拡張したものです。 ですから物体が x 軸方向以外の方向へ移動した時に関数 V の値が勝手に上下するようではエネルギー保存則が成り立たなくなってしまうのではないかという懸念があります。 かと言って、x 方向以外の方向へ移動した時には全く値が変化しないというのでは変数を 3 つに増やした意味が全くありません。
そこで、物体が y 軸方向に移動したときの V(x,y,z) の変化量は y 軸成分のエネルギー保存則に従って変化し、z 軸方向についても同様なことになっているという考えを導入してみましょう。 それぞれの軸方向について別々に考えていた位置エネルギーを共通の V(x,y,z) を使って表そうというわけです。 これによって次のような関係が言えるようになるはずです。
Fx(x,y,z) = −∂V∂xFy(x,y,z) = −∂V∂yFz(x,y,z) = −∂V∂z
これは大変に面白いアイデアですが、これまでの考えを大きく修正する必要があります。 エネルギー保存則はそれぞれの軸方向で別々に成り立っているようなものではなく、合計したエネルギーを考えて、それが保存しているという考えを受け入れないといけません。 ある方向へと進むことによって獲得した位置エネルギーを別方向への運動エネルギーへと転換することも可能だということです。 エネルギーというのはベクトルのように成分ごとに分けて表されるような量ではなく、合計した値こそが保存量として重要な意味を持つということになります。
現実の物体の運動を観察してみてもその考え方の方を支持しているようです。 位置エネルギーというのは山の高さに例えることができます。 南北方向の道を通って苦労して山頂まで登ったあとで、東西方向の道を通って楽に駆け下りることが可能です。
あらかじめ V(x,y,z) の具体的な形が定まっていれば (4) 式の計算によって力を求めることができ、そのような力を受けながら運動する物体はエネルギー保存則を満たしています。 (4) 式のような形で表すことのできる力のことを「保存力」と呼びます。
V(x,y,z) は (4) 式のような計算ができるように滑らかな連続関数でなければならず、位置によって一つの値が定まるようなものでなければなりません。
(要編集:ヒントが載っている魔導書ページへのリンク、記載されているページ数など)